山口県漁協祝島支店の組合員有志から県漁協の組合長宛の文書

現地から次の報告がありましたので、お知らせします。

(追記 2013.10.17)山口県漁協が10月17日に開催しようとしていた祝島支店の総会の部会は、延期となりました。

本日10月11日、

山口県漁協 祝島支店の組合員有志は

次の文書を、県漁協の森友信組合長宛てに提出しました。

原発のために金で海は売れん!と、

上関原発に伴う漁業補償金の受取りを拒みつづける

祝島の漁師さんたちの、状況と思いを知ってください。

* * *

2013年(平成25年)10月11日

山口県漁業協同組合

代表理事組合長 森友 信 様

山口県漁業協同組 合 祝島支店

組合員有志一同

貴職におかれましては、ますますご清栄のことと存じます。

さて、ご承知の通り、私たちはこれまで31年間、

上関原子力発電所の建設に反対し続けてきました。

原発建設に伴う約10億8千万円の漁業補償金についても、

受け取りを拒否し続けています。

2000年に初回支払い分の約5億4千万円の受け取りを迫られた時、

祝島漁協(現祝島支店)は、振りこまれた全額を返金して受け取りを拒否しました。

本来なら、この時点で原発計画はなくなっているはずです。

しかし、受け取り手のないこの5億4千万円は法務局に供託されました。

2008年に支払われた残りの半額についても、祝島支店は受け取りを拒否しています。

すると貴組合は、それを仮受けしました。

2009年2月と2010年1月、法務局に供託されていた5億4千万円が

国庫に収納される期限が迫るなか、

それを取り戻して受け取るよう、貴組合は祝島支店に迫りました。

そのたびに採決を迫られながら、祝島支店は受け取り拒否を決議しています。

にもかかわらず2010年 5月、貴組合はそれを勝手に回収し保管しました。

2012年2月、祝島分の漁業補償金全額を預かる貴組合は、

祝島支店にその受け取りを迫ってきました。

祝島支店は重ねて受け取り拒否を決議した後、

「この補償金について祝島支店では今後二度と協議しない」という

緊急動議も議決しています。

ところが貴組合は、祝島支店のその議決も無視し、

今年2月にも受け取りを迫ってきました。

さらに貴組合は、規約に違反した選出方法で議長を決めて採決を行ったうえ、

その結果、受け取り賛成が初めて過半数となったとし、

祝島支店がこの漁業補償金の受け取りを決議したと主張されています。

しかるに、この漁業補償契約については、

1972年(昭和47年)9月22日の水産庁漁政部長通達

(「埋立事業等に伴う漁業補償契約の締結にあたっては、

組合は関係する組合員全員の同意をとって臨むよう指導されたい。」)

にも明示されるとおり、関係する漁業者全員の同意が必要であると私たちは考えます。

漁業権を持っているのはあくまで私たち漁師であり、

漁業協同組合ではないことから、総会決議では決められないはずです(総有説)。

仮に、漁業協同組合の総会で決議できるという考え方(社員権説)に基づいたとしても、

この漁業補償金については三分の二以上の同意が必要です。

2月の総会 の部会での採決の結果は、

漁業補償金の受け取りに賛成が31票、反対が21票でした。

そうである以上、この結果をもって、

祝島支店が漁業補償金の受け取りを決めたとすることは、当然できません。

このように、貴組合が主張される受け取り決議なるものには疑義があり、

祝島支店の32名 (過半数)の正組合員および8名の準組合員は今年3月、

この漁業補償金を受け取らないという意思を、改めて貴組合に申し入れております。

しかし貴組合は、誠意ある回答を怠ったまま、

祝島支店に配分委員会をつくって検討することもなく、

漁業補償金の配分案を作成し、6月に突然出してきました。

さらには、その説明と採決のため6月21日に総会の部会を開催するとしながら、

前日になって突然、荒天を理由に延期し、

のちに8月2日に繰り延べたことは、ご承知の通りです。

その間、私たちは7月3日 に要請書を貴組合に送付し、

5項目について事前の回答を求めましたが、

これについても誠意ある回答はありませんでした。

前回、貴組合が総会の部会を開催すると通知された8月2日の当日も、

私たちは事前の回答を求めましたが、漁業者に限らず広く祝島の住民全般からも、

さらには祝島以外の地の住民からも、

事前の回答と説明を求める声がたいへん多かったことは、

反響の大きさを目の当たりにされた貴組合のご担当者の方々がご承知のことと思います。

その危険性が放射性物質に起因し、

地理的に限定することはきわめて困難かつ時間的に限定することが不可能であるという、

原子力発電所の特徴を考慮すれば、

そうした広範な人びとからの強い反応は当然だと私たちは考えますが、

漁業協同組合にとって責任があるのは漁業者のみと貴組合はお考えなのでしたら、

少なくとも、漁業者であり貴組合の組合員である私たちの質問に対しては、

責任もって、事前にご回答をいただくよう求めます。

このたび貴組合は、議案「漁業補償金配分基準(案)について」

祝島支店での総会の部会を10月17日に開催されるとのことですので、

改めてその旨を強く要請します。

つきましては、この件に関し、私たちの代理人より質問書を再度お送りすると同時に、

私たちからは、総会の部会に先だって下記2点について明確にして頂きたく、質問をいたします。

下記の質問事項について、10月15日正午までに、ご回答をいただくよう求めます。

質問1.

この漁業補償契約については、共第107号共同漁業権管理委員会

(以下、管理委員会と 称します)で採決したところ、

賛成多数だったことをもって、関連する8つの漁業協同組合分の漁業補償金を、

管理委員会が中国電力株式会社から受理し各漁協へ配分するという内容の契約を、

締結することが決定されました。

その際、管理委員会を構成する祝島漁協(現祝島支店)とその所属組合員も、

その決定に拘束されるという管理委員会および中国電力側の主張に対し、

採決で反対を表明した祝島漁協は契約に同意しておらず、

従って拘束もされないと祝島漁協側は主張し、対立しました。

それが今日まで続くこの問題の一因であると私たちは考えます。

これに関しては、仮に議決方法や拘束力等に関する疑問をひとまず置くとしても、

矛盾する事実が残ります。

この漁業補償金を「受け取る」声が多数を占めた管理委員会での採決では、

少数派は多数派の決定に拘束されるとして、

多数派に異を唱えた祝島漁協の意思は尊重されませんでした。

一方、この漁業補償金を「受け取らない」声が多数を占めた祝島漁協での採決では、

受け取りを希望する一部の組合員が多数派の決定に拘束されてこの漁業補償金を受け取ることができない、

という事態を憂慮し、貴組合はその後も採決を繰り返して少数派の権利を保全しようしています。

同じように採決を行いながら、結果については

恣意的な取り扱いをされておられるのは何故か、

明らかにしていただきたい。

質問2.

貴組合はこれまで、この漁業補償契約上の諸迷惑受忍義務は

共同漁業権の得喪変更にあたらない、と私たちに説明してこられました。

漁業補償契約無効確認請求訴訟の判決を念頭においてのことと考えます。

しかし、この司法の判断(2007年高裁判決=2008年10月最高裁で確定)から2年数カ月後、

東京電力株式会社の福島第一原子力発電所で過酷事故が現実となり、

事実として、原子力発電所により周辺の漁業は壊滅状態に陥っています。

2013年2月28日に祝島で開かれた貴組合の総会の部会での

仁保宣誠専務理事の言葉を借りれば、まさしく「環境が変わった」のです。

上記の司法判断についても、異なる結果がもたらされる蓋然性が高まっています。

貴組合のこれまでの説明は根拠を失ったという他ありません。

控えめに言っても、諸迷惑受忍義務が漁業権の得喪変更又は

これに準ずるものに当たるか否か、再検討が必要です。

にもかかわらず貴組合が、原子力発電所によって

周辺の漁業が壊滅状態に陥る危険性を微塵も省みない態度で、

本件の対応を続けておられるの は何故か。ご説明をお願いしたい。

以上

(報告者:木村 力さん)

脱原発の道 〜いのちをつなぐ、海をつなぐ〜

原発ゼロを続けたいと願う各地の動きやアクションの呼びかけを伝えます。新規立地計画をかかえる祝島沖・上関(山口)と大間(青森)、東電の福島第一原発事故のあと唯一稼働した大飯原発のある嶺南(福井)…3つの地で行動する人びとの直接発信と情報共有を目指すチームゼロネットの活動を応援し、マスコミが発信するニュースに留まらず、現地の状況にまつわる多様な声を発信します。