祝島 神舞(いわいしま かんまい)その8 〜 笛を吹く少年

笛を吹く少年

8月18日午後。

そろそろ神楽のメイン『岩戸開き』が始まります。

ポレポレコンビのいなくなった寂しさを振り払いながら仮神殿に戻ると

午前中とは打って変わって、たくさんの人が集まっていました。

祭りの仕事で忙しい島の人々も「岩戸開きだけは」と

手を休めて始まりを静かに待っています。

「皆さんがいい画を撮りたいのはよくわかります。

非常にありがたい。

しかし、皆さんの行き過ぎた行為が

祭りを台無しにする可能性が十分にあります。

長い時間かけて準備した祭りが

あなた方の行為ひとつで駄目になってしまいます。

どうぞ節度を保った取材をお願いいたします」

祭りの最高責任者とおぼしき方が

報道陣に対し、静かに、そして非常に強い気持ちで忠言されていました。

祭りの進行にこういう配慮も必要なのか…大変だ…

ふと鳴り物の方を見ると、笛を持っている人が三人。

三人???三人体勢、ってどういうことなんだろか。


演目が書かれためくりが、お待ちかね『岩戸開き』となりました。

鳴り物が鳴り始めます。

笛の三人は、早いテンポの節を一緒に吹いているようです。

メインだから大音量でってことなのかな。

5分経ち、10分経ち、20分経ち…。

ずっと同じ節を繰り返しています。

「こ、これは…た、大変だ…」

同じ節を繰り返し、というのは

一見簡単そうに聴こえるかもしれませんが

実はとても大変なんです。

何が大変か、って

だんだん気が遠くなるのを戻すのが大変なんです。

単調な演奏を繰り返しながら次のきっかけを待つわけですから

気を遠くしている場合ではないのです。

しかし、何せ単調ですから、これは大変です。

そして、終わってみれば40分でした。長い長い。

これはさすがに一人では息が続かないでしょう。

二人なら何とか、三人なら安心。

それで三人体勢なのか。

70代、40代、そして少年。

よくやった!少年!ゆっくり休んでくれ!

と思ったら、なんと!

次の演目は少年の独奏でした。

マジか!!!スゴイな!!!やりおるな!!!


ともあれ少年!偉いぞ少年!

4年後キミの音色を聴けるのを心待ちにしているよ!

全然知らない少年だけど

世界中に自慢したくなるほど誇らしく感じたのでした。

(つづく)

脱原発の道 〜いのちをつなぐ、海をつなぐ〜

原発ゼロを続けたいと願う各地の動きやアクションの呼びかけを伝えます。新規立地計画をかかえる祝島沖・上関(山口)と大間(青森)、東電の福島第一原発事故のあと唯一稼働した大飯原発のある嶺南(福井)…3つの地で行動する人びとの直接発信と情報共有を目指すチームゼロネットの活動を応援し、マスコミが発信するニュースに留まらず、現地の状況にまつわる多様な声を発信します。